映画「Blowup」ではロックバンド「ヤードバーズ」のライブシーンで

機器の不調からギターでアンプを殴りつづけ 壊れたヘッドをステージに投げ入れる

主人公のカメラマンは若者達と争って手に入れた弦がからまったヘッドを 街頭に出たとたん投げ出してしまう

こんなシーンがあった時代

私は「セントラルファッション」(現セントラルジャパン)新人のレッスン風景を撮っていました

「名古屋セントラルファッション」は東京でモデルとして活躍していた

故池田隆さんがプレーイングマネージャーとして始めたものでした

今でこそ170cm越の女性モデルはめずらしくありませんが当時はほとんどいませんでした

ヘヤースタイル ファッションとも興味深いですね

 

 

それはどうでもいいことなのですが

「Blowup」でカメラマン役をこなしたデヴィッド・ヘミングスは その後

ヘンリー・フォンダの娘ジェーン・フォンダと共演したロジェ・バデム監督の映画「バーバレラ」で

フォンダと手のひらどうしを合わせて行うSEXシーンを演じるなど話題になりました

 

 

フォンダつながりと言うことで

ヘンリー・フォンダの息子で ジェーン・フォンダの弟ピーター・フォンダがデニス・ホッパーと

ルート66をチョッパースタイルのハーレー・ダビッドソンで疾走する

ロードムービー「イージーライダー」が60年代の日本の若者達に共感を与えたのでした

ライド感を盛り上げるBGM「Born to be Wild」が全編を貫いていました

アメリカの若者たちが体制から逃避する愛と平和と自由のヒッピー文化を背景にして

マリファナを吸うシーンがやたら多かったような記憶があります

主人公がハーレーで保守的な西部の農民が乗ったトラックと並走するシーンで

いきなりショットガンで吹き飛ばされてしまう衝撃的なラストシーンは

アメリカンニューシネマの先鋒と言われる所以でもあります

スクリーン上にはハーレー・ダビッドソンが砂漠の砂塵と化していました

 

 

こんなシーンがあった時代

私は西部の町をマスタングで疾走していました

ネバダ アリゾナ [スチーブマックイーン}の「拳銃無宿」でライフルの銃身を切り落とした独特な拳銃で

様々な困難を切り開きながら 西部の無法地帯を渡り歩く賞金稼ぎのガンマンと同じルートを走っていることが感激でした

このTV映画シリーズの舞台背景は意外と新しく シリーズ後半では神父が持つ聖水を護衛するために

車に同乗する話しがありました 車はT型フォードだったと思います

教会に反対する荒くれどもに広い砂漠のなかで銃撃され車は動けなくなってしまった

ジリジリと照りつける日差しの中で二人の体は水分補給出来ないまま消耗していく

普通なら ここで命には代えられないと聖水を飲むことでしょう

でもね車に詳しい人ならピンときますよね

そう ラジエーターの中には大量の水がエンジン冷却用として入っています

今では冷却水とはいえエチレングリコールなど凍結防止腐食止めなどが主成分ですから

とても飲めたものじゃありませんが

 

 

それはどうでもいいことですが

ラスベガスからルート66を映画「バニシングポイント」のごとく疾走していると

突然ジャジャーというすさまじい音がエンジンルームから聞こえてきた

調べてみるとエアコンの電磁クラッチが割れてしまっている

外は気温40℃以上はあったでしょう

国道端のあちこちにICEと書かれた建物があり 周辺一帯が過酷な場所であることを教えてくれていました

とりあえずラスベガスに戻り車をシボレーにチェンジ

なにせ52年前のこと観光地図や旅行パンフレットの情報も数少なく行き当たりばったり

とりあえずの目的地はデスヴァレー

途中フーバーダムを見物しながら走り続けると奇妙な丘にたどり着いた

目の前には無数の小さな起伏がありそれぞれが なだらかな稜線を描いている

展望台になっている無数の丘が見渡せるところに「Zabriskie point」の標識が打ちこまれていた

ネットからお借りした絵がこちら

 

 

映画「Blowup」からしばらくして ミケランジェロ・アントニオーニがアメリカに渡り作った映画が

邦題「砂丘」原題「Zabriskie point」だ

この映画ではアメリカ文明を痛烈に批判して アメリカの象徴である

「エンサイクロペディア・アメリカーナ」であるとか冷蔵庫などの電化製品 その他様々な物質を破壊している

その高速度撮影で撮られた爆破シーンはシュールで美しくストーリーを超えて私を魅了しました

白眉は砂漠の真ん中に建つ近代建築の豪邸の爆破スローモーション撮影でした

魅了されたシーンはもう一つありました

柔らかな視線で撮られていた ひだ状の丘のふところで無数の裸の男女がハグをしているロングショット

とにかく圧倒されました

 

 

この丘はゴールドラッシュでわいていた頃にある山師が偶然見つけた場所だそうです

車にもどりしばらく走るとこの男がいました

 

 

この人物が丘を発見した男かどうか分かりませんが 後ろの建物はカジノを兼ねた酒場ですかね

この建物だったか覚えていませんが 昔の鉱山の資料を集めジオラマなどを使った展示館がありました

 

 

私がこの男の写真を撮っていた頃

ジェーン・フォンダはロジェ・バデム監督作品「獲物の分け前」に出演していました

私の灰色の脳細胞のひだに今も染みついていて忘れられないのが

傷心のジェーン・フォンダがプールから上がり椅子に座り込むラストシーンで

背景の部屋の壁がす〜っと逃げていく というか遠ざかっていくシーン

彼女の心の中からなにかが 汐が引くようにフェードアウトしていく様子を表現していました

物理的に背景を引きずって後ろに移動させれば容易に表現できるシーンなんですが

彼女の姿を微動だにさせないままコンクリートの床ごと移動させるのは不可能です

そこで私は3日3晩普通に考えました

そして考えをまとめモデルを汐見坂の砂浜まで連れ出し8ミリムービーで 試しに撮影をしてきました

'普通'の脳細胞をお持ちの'普通'の皆様には最初からお分かりでしたよね

まずはズームの望遠側で人物を真ん中に設置してカメラが近づきながら広角側にズーミングしていく

人物の大きさを変えないで背景のみが画面に広がってきます

この映画からしばらくたって三菱電機のスピーカーユニット 「ダイヤトーン」のTVコマーシャルが

お茶の間に放映されました

加納典明 高梨豊 篠山紀信 がそれぞれダイヤトーンにふさわしいイメージでムービーを作ったわけですが

加納典明はジャズシンガーの笠井紀美子を赤外線フィルムを使い歌っている顔のアップをスローモーション撮影していました

コダックが発売していた赤外線フィルムは36枚撮りしか発売されていなかったものですから

暗室で数十本のフィルムをつなぎ合わせムービーのマガジンに詰め込んだそうです

篠山紀信は当時CMディレクターをしていた大林宣彦の助言のもとタレントの栗田ひろみを下町で撮影しました

浴衣姿の栗田ひろみが下町の町並みを背景にたたずんでいます

しかし町並みはユラユラと揺れながら大きくなってくるではありませんか

さすが アングラ映画「いつか見たドラキュラ」を16ミリで撮っていた鬼才大林監督です

広角側から望遠側にズーミングしながら撮っていたんです

カメラをでこぼこな道に敷いたレール上のトロッコに置いたために町がユラユラしたんですね

 

 

この手法はTVCMなどであっという間にいろいろな場面で使われるようになりました

名古屋のムービー関係者によるとそのシステムを利用した名古屋初の仕事が北区の N1スタジオで撮影された これらしいです

広告代理店 名古屋博報堂の仕事でポスター撮りを担当したのが私でした

工場跡のスタジオに昼一にはいると せり上がった立込の前にレールが引いてありテスト撮影が始まっていました

東京から持ち込んだムービーカメラ機材 何でもズームレンズとカムチェーンがワンセットになっていて

レール上のカメラの動きとズーミングを同調させることができるそうです

この日持ち込んだカムチェーンが別のレンズのものだったらしく ADが東京まで取りに行く不手際があり

スチールの撮影に入ったのは深夜 沢山のストロボをセットしていざ撮影に

本番では地面にドライアイスを漂わせムービーと同じようにピンクの花びらを吹雪かせました

写真が上がってみると花びらの中にゴミっぽいものがまじっていてとても使えない状態でした

花びら抜きの写真にピンクの花びらを抜きで入れて使いました

そんなこんなで

私にとって映画ネタは楽しいものです

いやぁ〜映画ってホントいいもんですネ

さよなら さよなら さよなら